「寒い。」 縋るような目をした耕平が、ただ一言そう言った。 肉まんを賭けよう。 冬の足音が聞こえてきた霜月も下旬。 雪でも降りだしそうな曇り空の下、我が校の生徒会長である烏丸耕平が地べたに体育座りをしていた。 「寒いんだったら校舎の中入ればいいじゃない。」 「や、無理。閉まってる。」 その言葉に耕平が寄りかかっている校舎の入り口のドアに手をかけて押してみた。 これで開いたら、耕平転ぶなぁ。 でもそんなことは無かった。ちょっと残念。 「ホントだ。じゃぁ職員室に鍵取りに行ったら?」 「無理。」 「何で?」 そう聞いたら、黙り込んでしまった耕平。 冷たい風が吹いて、ワタシのマフラーがヒラヒラなびく。 いつまで経っても膝に顔をうずめて、口を開く様子が無い耕平。 「もういいや。私取りに行ってくる」 どうせワタシも生徒会室行かなきゃ行けないし。 「あ、熊谷ちょい待ち!」 職員室の方に歩き出そうとしたら、今まで黙ったままだった耕平が立ち上がって言った。 「何?寒いから話は手短に。」 「職員室行っても俺がいること浅野先生に言わないで!」 「何で?」 そしたらまた黙った耕平。・・・何なのよ! ちなみに浅野先生は公民科の面白い先生。どうでもいいけど一児のパパ。 面白いけど笑顔で怒るから結構怖い。 「・・・・・・課題」 「え?」 小声で何か耕平が言った。 「政経の課題まだ出してない、から。」 課題?・・・・・・あぁ。 「グループ課題?」 その言葉に無言で頷く耕平。 「でも耕平の班出してたじゃん。」 「俺の調べたトコだけまた提出しなおせ、だって」 「えぇ?!あれって評価そんなに厳しかった?」 「いや、真に全部やってもらったのバレた」 「あぁ、あの社会に詳しい?」 「そう。ってかアレは詳しいんじゃなくてもうオタクだよ。」 「でも何でばれたの?」 「『文面で分かる』って言ってた」 スゴイな先生。 ってかホントに寒い。手先が冷たくなって来た。 早くあの暖かい職員室へ逃げ込みたい。 「再提出いつまでだったの?」 「一週間前。」 「それで浅野先生に会えないの?」 耕平は首を縦に振った。 心なしか顔が青ざめてるのは気のせいじゃないと思う。 あの笑顔で怒られるのは誰だって嫌だ。 「今日先生いるの?」 「いた。見た。」 「どこで?」 「・・・職員室に鍵取り行ったらいた」 「え、じゃぁドアの窓からのぞいて浅野先生見っけたから中入らずに帰ってきましたーってこと?」 答えがない。図星のようだ。 まったく。しょうがない生徒会長様だなぁ。 「分かった。じゃあ言わないであげる」 「マジで?!」 「うん」 「ありがとうございます熊谷様!!」 でも寒い中わざわざ鍵取りに行ってあげるんだから、何かほしい。 なにがいいかなぁ・・・。 「その代わり肉まんおごってね」 「おごるからホントに言うなよ!」 「はいはい」 寒いときはあったかいもの食べたい。 あ、もう少し高い物言えばよかったかな。 *  *  *  *  *  *  *  *  *  * Thanks♪自主的課題 06/11/23